真愛



久月組の兄弟…。

ほんと色んな組があるもんなんだね。

どんどん裏の世界を知っていってるような。

「ち、な、み、に!久月組は東の番人、紅瀬組は西の番人って呼ばれててね?日本の東側を取りまとめるのが久月組、西側を取りまとめるのが紅瀬組なの!」

「へぇ、互いに守りあっている、と。それで、その休戦協定って破ればどうなるの?」

少しの沈黙の後、重たく口を開く。

「……想像もつかないよ。ただ1つ確かなのは…どちらかが死ぬまで止まらない」

雪乃があまりにも苦しげにいうもんだから、思わず抱きしめた。

「なー…つん…?」

「そんなこと、きっと起きないよ。もしそうなったら、私が全力で止めてみせるから」

優しく頭を撫で、雪乃を落ち着かせる。

きっと、大切な人を失うのをすごく恐れてるだろうから。

不思議と、そんな感じがする。

「大切な人を、失いたくないものね」

「ふっ…ぅ……な、つん…っっ!!!」

雪乃は声を震わせ泣いていた。

息を詰まらせながら、泣き続けた。

「もー、そんなに泣かないの!ほらほら、笑顔!雪乃には笑顔が似合うんだから!」

そういうと驚いた顔で私を見た。

そしてまた涙を流した。

「やっぱり、似てるよ…なーつんは……」

「え?誰に?」

「……私と楽兄にはね、お姉ちゃんがいたの」

そういってゆっくりと話し始めた。

聞いているうちに胸が苦しくなった。

2人の悲しい過去を。

こんなに辛く苦しい過去を心の奥底に閉じ込めて。

苦しかったよね。

辛かったよね。

もうそんな辛い思い、もうさせないから。

絶対、約束するから。







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