真愛
「楽兄!?どうしてここに?」
「ここの警備してる組の奴から連絡があったんだ。仕事も片付いたし、迎えに来た!」
「え?仕事終わったの?尊さんは?」
楽はしまった、という顔をした。
ボロが出た。
尊が嘘をついたってことを証明しているようなものだった。
「…仕事じゃないのね、遅くなる理由は」
「いや、奈々ちゃん、これにはちゃんと理由があって…」
「いいよ、わかったから。雪乃も早く行きな?」
私は強がって笑って見せた。
それで雪乃が引き下がるわけもない。
「やだよ、なーつんが心配!なーつんも一緒に本家に…」
「いいからっ!! ……お願い、1人にさせて…」
私は声を荒らげてうつむいた。
2人はしぶしぶマンションを出て行った。
鍵をかけ、リビングの電気を消し、ソファにうずくまる。
ポロポロと流れる涙。
こんなことで不安になる自分に腹が立った。
たったこれだけのことで揺れる自分に。
信じるって決めたのに。
そう思うとやっぱりどんどん変な方向に考えてしまって。
頭を占めるのは“捨てられる”の5文字。
それが怖くて怖くてたまらなかった。
やっと幸せになれると思ったのに。
やっと光を掴めたのに。
やっぱり私は、陽の下では生きられない?
陽の光を浴びて生きることはできないの?
幸せになっちゃ…いけない?
拭っても拭っても溢れる涙。
その涙を止める術を私は知らなくて。
どうしたらいいのか分からなかった。