真愛
マンションの外には見慣れた1台の黒い車。
乗り込むと、運転席には楽の姿。
「出せ」
「了解」
それだけいうと、車はどこかへ向け走り出した。
どこに行くのか聞いても答えない尊。
相当怒ってるんだと思う。
けど、浮気した尊が怒るのはお門違いじゃない?
私が怒りたいくらいなのに。
しばらく車を走らせていると、ある場所で止まった。
降りるよういわれ、外に出ると、目の前には大きな木製の門が現れた。
どこかで見たような…?
でも本家とは雰囲気が違う気がする。
「行くぞ」
手を引かれ、中へ入ると古風な日本庭園が広がっていた。
本家と同じようにヤッさんがズラーッと並んでいる。
でもどの人も見たことがない顔。
ってことは他の組?
慣れたようにズンズン進む尊、緊張しながら歩く私。
その後ろから笑いをこらえながら歩く楽。
私が緊張してるのがおかしいのね。
後でシめる。
長い廊下を歩き、ある座敷の前で足を止め、何も言わず勢いよく襖を開ける尊。
「ん?尊か!どーした、忘れ物でも…って、なんで怒ってんの!?」
そこには鮮やかな着物を身にまとった、端正な顔立ちの男性がいた。
髪は金髪で無造作にセットされている。
キリッとした顔立ちで、尊とは違う雰囲気が感じられる。
物腰柔らかそうな人…?
でもどこかで見たことあるような…。
「お!これまた美人な嬢ちゃん!この子がさっき話してた子か!」
「さ、さっき…?」