真愛
綾牙side
「帰ってしまわれましたね」
「ちぇ、もうちょっと居てくれてもいいんじゃないのか!?」
「若がそうやってうるさいからじゃないんですか?」
「うるさ…!?…仕方ねぇだろぅ…俺はこういう人間なんだよ…」
はぁ、とため息をついてふと思い出す。
「尊の連れてた嬢ちゃん、べっぴんだなぁ」
「そうですね、尊さんが選んだだけの女性です」
「なぜあの子が東の手に渡ってる?」
そういうと朱雀は少し黙り、タッチパネルを出した。
朱雀の相棒ともいえるこのタッチパネルには、様々な情報が詰め込まれている。
なんせコイツは、紅瀬組の情報を取り扱っているから。
機密情報も全てコイツが管理している。
紅瀬組の要といっても過言ではない。
「どうやら…あの女がヘタを打ったようですね」
「ふぅん…紅瀬組との契約を破るたぁ、命知らずなこった」
フッとバカにするように笑い、天を仰ぐ。
「成長してたなぁ、嬢ちゃん。あの頃とは違う、光が宿った瞳だ。だが……このままでは終わらせねぇよ」
尊、オメェにゃ悪いが…。
こちらとて“契約”があるんでな。
「その内、迎えにいくぞ」
東と西の崩壊への歯車が今
――――回り出す。