Round Error World
 午前十時二十三分。突撃開始から一時間も経たずに、第三基地の主力部隊は壊滅していた。鼓膜がイカレたらしい、無線の声が良く聞こえない。
「ああああああああああああああっ!」
 動けよ、俺の脚。まだ動くだろう? そこにまだ生きてる兵士が居る。その命を助けることくらいは、出来るだろう?
 どうせ俺は死ぬんだから。もうそれは痛いほど分かっているから。それが運命とやらなら、受け入れる覚悟はもう出来ているから。
 だから、せめて一人でも多く、助けさせてくれ。
 敵の戦車が見えた。鉄色の地面に血がべったりと広がって行く。
「……あ……?」
 その血の持ち主が俺だと気付くのと、銃声が脳天を貫いたのは同時だった。
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