スパイシーショコラ
第1章  悶絶ショコラ
伝票整理に疲れた午後。
山田花江はふと席を立った。

( あー、もう限界!!  こんな時には、そう、チョコレートしかないわね!!)


疲れた脳と体、そして心を癒すには、血糖値を瞬時にしてアゲる、チョコレートが一番という訳だ。


足早に部屋を出て、女子トイレへと急ぐ。

パウダールームに併設された、ロッカーの扉を開け、小さなショップバッグを取りだす。

     

”Le poète de chocolat”
〜チョコレートの詩人〜



シンプル、というよりは、いかにも簡素な白いそのショップバックの中央には、恐らくは手製だろう、フランス語の店名のスタンプの刻印があしらわれていた。

その文字のつたなさに、思わず笑みがこぼれる。


「うふっ。」



中の小箱をそっと取りだし蓋を開けると、ふわっ、と甘いショコラの香りが、花江のからだを優しく包みこむ。


(  あ~~っ、たまらない!!! )


はやる気持ちをおさえつつ、可愛く小さく整列して並ぶ、チョコレートの、一粒を手に取った。



これほどまでに繊細な肌をもつチョコレートに、今まで出会ったことなどあっただろうかと思わずにはいられない、指先の体温が伝わると、溶けてしまいそうなテクスチュア・・・・・・



しばし恍惚とし・・・・・・・・・・ゆっくりと、口に含んだ。




「あああ~~~!!!」




全身を駆け抜ける、芳醇なるアロマが、南国の踊り子の情熱を思わせる味わいのリズムをともなって、花江を悶絶させる。




「ふうう・・・・。」


激しいKissのあとのように、花江の体は火照っていた・・・・。



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