スパイシーショコラ
第8章 動き始めた運命
ひとりとぼとぼと、公園へと向かう花江。


少し前までは、うきうきと心を弾ませながら急いだ道筋なのに、今日の足どりは少々重かった。



(また、あのウンチク攻撃がはじまったら、いやだなあ・・・・)



さすがの花江も、躊躇してしまうほど、はじまったら終わらない、アキラのウンチク語り。

。。。。いますね、ごく偶に。こういうタイプ・・・・。

本人に自覚がないのが典型で、しかも悪気もないから始末が悪い。



(ま、でも、根はイイヤツなんだけど・・・ね・・・・。)


仕方なしに、自分で自分を納得させてみる。


と、そんなことを悶々と考えていると、公園の脇の道路に、見覚えのあるスポーツカーが一台、駐車してあるのに気づいた。



(あっ、あれは、きっと流星さんの車だわ。。)



多少、いろめきたつ心。でも、そうとは悟られないよう、できる限り平静をよそおい屋台へと歩をすすめた。





なにやら、楽しそうに談笑するアキラと流星。


いまどき珍しいオカッパ頭の青年と、いまどき過ぎるほど無造作なロンゲの青年。




沈みかけの太陽が、逆行となってオレンジ色に照らし出すそのシルエットは



これ以上ないほどに、シュールで前衛的だった。




花江がカメラマンだったなら、迷わすシャッターを押してしまったろう。





(なんて素敵なサプライズ・・・。)



さっきまでの、憂鬱な気持ちはどこへやら、美しい光景というものは、いつでも人を幸せで包み込んでしまう。

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