スパイシーショコラ
第11章 隠れ家サロン
とっさに、落し物を拾うふりをして、身をかがめた。
上目遣いに様子を伺うと、小走りに遠ざかるアキラの姿が見える。
後を追って、ショップから出てきた流星も、花江の姿に気づくこともせず走り去った。
(ふぅーっ!!もう、やれやれだよ~、ちょー焦ったぁ~!!)
ほっと一息ついたのもつかの間、急がないと彼らを見失ってしまう。
花江も小走りに後へと続いた。
信号のある角で左に曲がった彼らは、そのまま進むと、さらに小さい路地を左折した。
こんな込み入った場所に、何の用かしら?
不審に思いつつも、花江は後をつけ続けた。
程なく、彼らはとある建物へと姿を消した。
あわてて駆け寄ると、その古いビルの階段を上る、二人の姿が見える。
彼らは2階にある部屋の扉の前で止まった。
呼び鈴を鳴らすと、すぐに店の扉が開いた。
中から出てきたのは、前髪を斜めにカットした、とてもファッショナブルな女の子。
笑顔で二人を迎え入れると、すげなく扉はバタンと大きな音をたてて閉じられてしまった。
(えーっ、どうしよ!ここまできてシャットアウトとは、想定外だわよ~!!)
花江にとっては思いもよらない非常事態に、思わず地団駄を踏んでいると、誰かが花江の肩を叩いた。
「ちょっと、あなた、ウチに何かご用?」
あわてて振り向くと、短髪を金髪に染めたメガネ姿の男性が、決して怒っているふうではなく、きょとんとして突っ立っている。
「え、え、ええーっとですね、私はですね、ちょっと知り合いが、ここに入っていったとこを目撃してしまったといいますか、なんと言いますかー」
(おっと、ビックリしてついホントのことしゃべちゃった!!ま、まずい!!)
「あら、そうなの~、じゃアンタも遠慮せず入っちゃいなさいよ~、ホラホラ~」
その男性は、見かけによらない力強さで、花江を強引に店内へと押しやった。
「あっ!!ちょっ、ちょーっ!!あっ、わ、わたしは結構ですーっ!!」
言うだけ無駄だった。
無理やりに連れ込まれた店内は、外側から見たビルの古びた印象とはうって変わって、とてもオシャレな内装。
アンティークな雰囲気で統一された店内は、中央に据えられた肘掛のあるゴージャスなロココスタイルの椅子と、大きな鏡、壁際のシャンプー台などから、すぐにヘアサロンであることが判った。
(そっかー、ここは今流行の隠れ家サロンってやつね。スゴイ、おしゃれ~♪)
天井からぶら下がる、ところどころ塗装が剥げたシャビーシックなシャンデリアが、この部屋の主役だ。
思わず見とれてしまう花江だった。
「あっれぇ~!!花ちゃん、どうしたの!!なんで、ここにいんのー!!」
頭のてっぺんから素っ頓狂な声をあげて近寄ってきたのはアキラだった。
「ははは・・・。いや、その、えっと・・・」
もごもごと口ごもっていると、間髪いれずに、
「あっらー、ホントに知り合いだったのね~!!アタシ、このコ、アンタ達のストーカーなんじゃなかと思ってサ、とっちめてやるつもりだったのよ~
ザンネン~♪」
と、とんでも発言を繰り出す金髪オカマ、じゃなかったジジィ!!
「はぁ~???」
(なっ、何言っちゃってんのこのジジィー!!ざけんじゃねーぞ、このカマジィがっ!!)
と、声になりそうなのをグッとこらえる。
「アッハハハッ!!真島センセー、絶好調!!今日も毒舌冴えわたるってヤツですか~!!」
ヘドバンしながらバカウケしているのは、モチロン流星だ。
無駄に大袈裟なリアクションは職業病だろうか・・・。
「・・・・。そっ、そんなに笑わなくったって!!もう~!!」
「ハイハイ、意地悪はもうオシマイ!!
わかってるわよ、表参道で知り合いにバッタリ~なんて、良くあるハナシじゃない。
声かけようと思っても、人ごみに遮られて追いつかない~なんて、アタシもしょっちゅうヨ!!
ま~でも、ずっーっと追いかけてくるコも珍しいけど!!」
なーんだ、このカマ・・じゃなかった、真島センセイ、だっけ、結構話せそうじゃない。
「ま、そんなところが花ちゃんらしい、っか。
さて、ご紹介が遅れました。花ちゃん、こちらはヘアメイクのセンセーで、真島センセイ!!
こんなだけど、業界では結構有名なんだよ!!
そして、センセイ、こちらは花ちゃん、といっても・・・えっとゴメン・・・、詳しくはオレも知んないんだけど、コイツ、アキラの店の常連さん、でいいんだよねっ!
それから・・・、そうそう、こっちが今日の主役だった、未来の天才ショコラティエ、アキラです。
今日は、アキラをバッチリ変身させてやって下さい!!マジたのんます!!」
あの、流星がペコリと頭を下げた。
この真島センセイ、どうやら相当に大物らしい・・・。
そういえば、何処かで見たことあるような・・・。
「う~む・・・。」
しばし、考え込む花江であった。
つづく・・・。
上目遣いに様子を伺うと、小走りに遠ざかるアキラの姿が見える。
後を追って、ショップから出てきた流星も、花江の姿に気づくこともせず走り去った。
(ふぅーっ!!もう、やれやれだよ~、ちょー焦ったぁ~!!)
ほっと一息ついたのもつかの間、急がないと彼らを見失ってしまう。
花江も小走りに後へと続いた。
信号のある角で左に曲がった彼らは、そのまま進むと、さらに小さい路地を左折した。
こんな込み入った場所に、何の用かしら?
不審に思いつつも、花江は後をつけ続けた。
程なく、彼らはとある建物へと姿を消した。
あわてて駆け寄ると、その古いビルの階段を上る、二人の姿が見える。
彼らは2階にある部屋の扉の前で止まった。
呼び鈴を鳴らすと、すぐに店の扉が開いた。
中から出てきたのは、前髪を斜めにカットした、とてもファッショナブルな女の子。
笑顔で二人を迎え入れると、すげなく扉はバタンと大きな音をたてて閉じられてしまった。
(えーっ、どうしよ!ここまできてシャットアウトとは、想定外だわよ~!!)
花江にとっては思いもよらない非常事態に、思わず地団駄を踏んでいると、誰かが花江の肩を叩いた。
「ちょっと、あなた、ウチに何かご用?」
あわてて振り向くと、短髪を金髪に染めたメガネ姿の男性が、決して怒っているふうではなく、きょとんとして突っ立っている。
「え、え、ええーっとですね、私はですね、ちょっと知り合いが、ここに入っていったとこを目撃してしまったといいますか、なんと言いますかー」
(おっと、ビックリしてついホントのことしゃべちゃった!!ま、まずい!!)
「あら、そうなの~、じゃアンタも遠慮せず入っちゃいなさいよ~、ホラホラ~」
その男性は、見かけによらない力強さで、花江を強引に店内へと押しやった。
「あっ!!ちょっ、ちょーっ!!あっ、わ、わたしは結構ですーっ!!」
言うだけ無駄だった。
無理やりに連れ込まれた店内は、外側から見たビルの古びた印象とはうって変わって、とてもオシャレな内装。
アンティークな雰囲気で統一された店内は、中央に据えられた肘掛のあるゴージャスなロココスタイルの椅子と、大きな鏡、壁際のシャンプー台などから、すぐにヘアサロンであることが判った。
(そっかー、ここは今流行の隠れ家サロンってやつね。スゴイ、おしゃれ~♪)
天井からぶら下がる、ところどころ塗装が剥げたシャビーシックなシャンデリアが、この部屋の主役だ。
思わず見とれてしまう花江だった。
「あっれぇ~!!花ちゃん、どうしたの!!なんで、ここにいんのー!!」
頭のてっぺんから素っ頓狂な声をあげて近寄ってきたのはアキラだった。
「ははは・・・。いや、その、えっと・・・」
もごもごと口ごもっていると、間髪いれずに、
「あっらー、ホントに知り合いだったのね~!!アタシ、このコ、アンタ達のストーカーなんじゃなかと思ってサ、とっちめてやるつもりだったのよ~
ザンネン~♪」
と、とんでも発言を繰り出す金髪オカマ、じゃなかったジジィ!!
「はぁ~???」
(なっ、何言っちゃってんのこのジジィー!!ざけんじゃねーぞ、このカマジィがっ!!)
と、声になりそうなのをグッとこらえる。
「アッハハハッ!!真島センセー、絶好調!!今日も毒舌冴えわたるってヤツですか~!!」
ヘドバンしながらバカウケしているのは、モチロン流星だ。
無駄に大袈裟なリアクションは職業病だろうか・・・。
「・・・・。そっ、そんなに笑わなくったって!!もう~!!」
「ハイハイ、意地悪はもうオシマイ!!
わかってるわよ、表参道で知り合いにバッタリ~なんて、良くあるハナシじゃない。
声かけようと思っても、人ごみに遮られて追いつかない~なんて、アタシもしょっちゅうヨ!!
ま~でも、ずっーっと追いかけてくるコも珍しいけど!!」
なーんだ、このカマ・・じゃなかった、真島センセイ、だっけ、結構話せそうじゃない。
「ま、そんなところが花ちゃんらしい、っか。
さて、ご紹介が遅れました。花ちゃん、こちらはヘアメイクのセンセーで、真島センセイ!!
こんなだけど、業界では結構有名なんだよ!!
そして、センセイ、こちらは花ちゃん、といっても・・・えっとゴメン・・・、詳しくはオレも知んないんだけど、コイツ、アキラの店の常連さん、でいいんだよねっ!
それから・・・、そうそう、こっちが今日の主役だった、未来の天才ショコラティエ、アキラです。
今日は、アキラをバッチリ変身させてやって下さい!!マジたのんます!!」
あの、流星がペコリと頭を下げた。
この真島センセイ、どうやら相当に大物らしい・・・。
そういえば、何処かで見たことあるような・・・。
「う~む・・・。」
しばし、考え込む花江であった。
つづく・・・。