スパイシーショコラ
第2章 屋台のショコラティエ
「ふぅ~、ヨカッタ~!!  また私、一番のりねっ!!」






「あはは!そんなに心配しなくて大丈夫だよ、ちゃーんと君の分は、ほら、こうして取っておいてあるから。はいっ、花ちゃん、これ、君の!」





そう言いながらアキラは、屋台の裏から、ひとつの紙袋を取りだした。






「うわ~、ありがとう♪今日はどんなチョコレートかなぁ??」






袋を覗きこむと、いつもの甘い香りと共に、一粒一粒、寄り添うように肩を寄せ合う、チョコレートたちの姿が、目に飛び込んだ。



彼ら、いや、彼女たちと呼ぶ方がふさわしいだろうか。




一粒一粒が、作り手の愛情を一心に受けた、育ちの良い表情をしている。




まるで、生命をもっているかのような佇まい。





そう、これなのだ。



アキラの作るチョコレート達のもつオーラ。



奇をてらった装飾が施されているわけでも、凝ったラッピングで着飾っているわけでもない。



ましてや、有名ブランド店と軒を並べるでもないスタイリッシュさを欠いたこの古びた、しがない屋台を売り場としたシチュエーションにあってもなお、光り輝く気品を備えたチョコレートたち。






不思議だった。





この、一見素朴な青年の、どこにこんなチョコレートを作りだす力があるのか。



まじまじと見つめる花江のそんな思いをよそに、屋台上のショーケースに並ぶチョコレートたちを愛しそうに見つめる、アキラ。





その眼差しに、この人なら無理もないかと妙に納得してしまう自分を感じた。



無垢な瞳と、素朴ないでたちの青年、アキラ。




顔立ちは整っているものの、この青年はそんな自分の美点に気付いてなどいない。




無造作に伸ばしっぱなしになった髪は、おそらく自分で切っているのだろう、まるで向井まきおさんのような、おかっぱだった・・・・。



じっと見つめる花江の視線に、アキラが振り向く。





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