スパイシーショコラ
「ねー、ところでさー、「ホストの流星」ってみんな知ってる?」





とうとう、言ってしまった。








根がおしゃべりなタイプの花江にとって、
昨日の出来事を黙っているなんて拷問に等しかった。







だが、本当は、内緒にしておきたかったのだ。


言えば、アキラの店の存在も皆に知れてしまう。それが嫌だった。







理由なんて、たわいもない。自分だけが知っている、とっておきの店。




夜の公園に現れる、謎の屋台ショコラティエ。





今時、なんだかロマンティックではないか。







そうはいっても、そのうち言いたくなるのは解ってはいたが、
もうすこしだけ、自分だけのショコラティエにしておきたかったのだ。





「知ってる、知ってる!!今、チョー話題のイケメンホスト、
三枝流星でしょー。テレビとか雑誌でスッゴイ騒がれてるじゃん!!
でも、急になんで。ファンになっちゃった?登坂さんに次いで??」







テレビ&ゴシップ&イケメン大好きの好美が真っ先に食いついてきた。







「いや、まー、そーゆー訳じゃないんだけど・・・。なんてゆーか・・・
実は、昨日、本人を見かけたってゆーか・・・」







口火をきったのは自分なのに、思いがけず、
流星がかなりの有名人だった事に動揺を隠せない花江。





その様子にさらに興味をかき立てられる同僚たち!





彼女達に、自白を強要される犯人のように詰め寄られ、
花江は、洗いざらいを打ち明けてしまったのだった。











「ふっふっふっ、花江クン。早速今夜は、その屋台のチョコレート職人、
アキラ君とやらのところへ、私達を、連れていってくれるのよね?」










最年長の百瀬さんが、黒縁メガネを光らせて、言った。










・・・・・つづく

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