太郎と花子
今日は太郎くんと一緒に登校できなかった。
運動部が朝から草むしりなどグランド整備をする日でマネージャーの私はグランドの端っこでちまちまと草をむしっている。
そう言えば太郎くんに今日一緒登校出来ないことを伝えていない。
まぁいつも偶然っぽく近づいているのだからそんな事をいう必要はないかもしれないけど私と一緒に登校できなくて淋しいとか思ってくれたらいいなぁ。
なんて思ってふと正門を見ると太郎くんが登校して来た。
そして太郎くんの横には昨日のあの美月先輩とやらがいる。
ふたりは楽しそうでしかも太郎くんは笑っている。
私には最近見せてくれないその笑顔や少し頬を赤らめて照れている太郎くんを見て美月先輩が好きなのではないかと不安を感じる。
いやいや私の勘違いかも。
野球部の夏の大会が終わるまで朝練の手伝いするため太郎くんと一緒に登校できないからその間に太郎くんチェックしなきゃ。
そんな事から私は毎朝太郎くんチェックを始めた。
すると毎朝美月先輩と一緒にやって来る。
しかも私と居るときより楽しそうに見える。
そして部活帰りもふたりは一緒でもう恋人同士にさえ見える。
お似合い過ぎて切ない。
でもあの二人がこのまま上手くいくとは限らない。
先輩はモテるだろうから太郎くんが振られるかも。
振られるのを気長に待って失恋したところを慰めて私とラブラブになるってのもありかも。
なんて汚いことを考える情けない惨めな自分がいる。
そんなときに奇跡が起きた。
朝練が終わりグランドで道具を片付けていると
「花子。
最近、朝早いの?」
登校してきた太郎くんが話しかけてくれた。
「そうなんだ。
夏の大会が近いからマネージャーもお手伝いすることになって大会が終わるまで朝早いんだよ」
「そうか。
最近朝、会わないなぁって思ってて。
でも大丈夫か?
疲れた顔でクマとかひどいぞ。
これでも飲めよ」
なんて私の大好きなミルクティーをくれた。
「ありがとう」
すると
「太郎くん。
おはよう」
とあの美月先輩が現れた。
私と太郎くんを見てニヤニヤする。
すると太郎くんが恥ずかしそうに赤い顔をして先輩行きますよと手を取って歩き出した。
幸せからドーンと不幸にまっ逆さま。
「おはよう、花子
なんか死人みたいな顔してるけど大丈夫?」
「そりやそんな顔にもなるよ。
私の何十年にわたる片想いが終わろうとしてるのだからおかしくもなるよ」
「え?
何それ?」
「太郎くんに好きな人がいるみたいでさ」
「へぇ。
私は太郎くんは花子が好きなのかと思ってた」
「そんなありもしない事を言ってくれて慰めてくれてありがとう」
「じゃあダメ元で告白したら?
もうこうなったら今までのストーカー紛いの思い全てをぶつけて気持ちよく終わりなよ」
「なるほど。
それもそうかも。」
なんて単純な私は振られるとわかっていて告白しようと決めた。