距離0センチ


不安そうな顔をしてる。



何でいつもいつも変なところで自信無くすの?

抱きついたり連れ回したり、忠犬みたいなのに自由奔放で好き勝手するのに。



「……いいよ」


聞こえたかな?ってくらい小さな声を出した。

でも立花君の手がピクッと動いて、聞こえたんだと分かる。


「この場所は誰にも言わないし、」

「……先輩」

「新しい場所だって行ってみたい」


立花君の顔が上がる。

私を見てるのがわかる。

でも逆に私が立花君の顔を見れなくなって、横を向いて話す。


「紫乃先輩……」


「だいたい場所なんてどこでもいいよっ」

そんな期待した声で呼ばないで。



「紫乃先輩、こっち向いてください」


「とっておきの場所なんてなくても花火みれるっ」

そんな優しい声で呼ばないで。




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