距離0センチ
「じゃあ、男の人と2人で花火大会は初めてですか?」
「うん…」
「そっか…へへ」
あからさまにわかりやすい反応。
立花君がうれしがるのを分かって、このことを言う私は悪いやつだ。
だって、うれしがる立花君を見て、喜ぶ私がいる。
恥ずかしいのと、ちょっぴり浮かれてる自分を隠したい気持ちから、膝の上に置いた自分の手に視線を下げる。
すると立花君の頭が、ぐっと私の方に近寄ったのが感覚でわかった。
ドキッとはねる心臓。
私の体左側に意識が集中して熱い。
逃げたい、動けない。
次の立花君の行動を待っていたら、
いつもより低い、まるで内緒話をするときのような声で耳元で囁かれた。
「紫乃先輩の初めて、いただいちゃいましたね」
嫌でもピクッと反応する私の体。