距離0センチ



ぼぼぼって感じで熱くなる体。


やられたって思って、勢いよく立花君を見る。


「……っな!?」



私きっと情けない顔してるけど、そんなことより条件反射のように振り向いた。



そして、自分の行いを恨む。


至近距離に立花君の顔がある。

近い、目が合う、めっちゃ見られてる。


一瞬にして頭の中で整理される。


そして、ちょっと驚いた顔から、にやっとした顔に変わる立花君。



たまに見せる意地悪で魅力的な瞳。

小悪魔みたい。


「それと、俺も初めてなんで
……紫乃先輩ちゃんと貰ってくださいね?」



ちょっと甘えたな口調で、真っ直ぐに私を見る立花君はやっぱり犬っぽい。


忠犬のくせに、いっちょまえな言葉を言うから、私はムキになってそっぽを向く。



馬鹿って言っても立花君は楽しそうで、たぶん私が動揺してるのバレてるからだ。



私の気持ちはバレませんように……。



人の減った電車に揺られて、ただただ早く着いてと願った。





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