距離0センチ
頑張れ、頑張れ。
大丈夫、大丈夫。
心の中で繰り返す応援。
知らず知らずのうちに、私は立花君にこんなにも情が移っていたのかと思った。
「位置について、用意……」
______パンッ
風が見えるようだった。
太陽の光を浴びながら、颯爽と走る立花君の黒髪しか記憶になかった。
気づけば3位でゴールしていた。
その瞬間の出来事に、私は、張り詰めていた糸が切れるかのように、ため息がこぼれた。
それは初めての経験だった。