距離0センチ




彼は、あの時から懐っこい犬みたいだったなあ。



「今から移動教室なんですけど、時間があったので遠回りしました!」



ニコニコと私たちに話かける立花君。



つまり、わざわざ私たちに会いに来たってことかな。



「ゆづゆづは暇なんだね~!」


なんて嫌味っぽくはないけど、由結がそう言った。




すると立花君は、さっきまでのハイテンションから、落ち着いた態度で言った。




「だって、会いたかったんです」



「……なに」



立花君は私を見つめる。



私に何かを求めているのが分かる。


だけど、言葉が見つからない私はぶっきらぼうなことを言ってしまう。


自分可愛くないな、なんて思った。



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