シロツメクサ
困り果てたあたしは、
最終手段に出る。
「…すうっ」
と、大きく息を吸って
「起きろーーーーッッッ!!!」
晴一の耳元で、
精いっぱいの大声で叫ぶ。
すると、
「うおあえいっっ!!??」
「…うっわー…
あ行全部言ったねー…」
上体を跳ね起こした晴一に
あたしはそう声をかける。
「ぇ、あ、い?」
「おはよ」
なんだか頭が混乱してるっぽい
晴一にあたしは微笑みかける。
「…ぉ、おお…
-‐…ぁあ、優奈、か…」
-‐寝ぼけてるってか、
あたしの存在忘れてたらしい。
…まぁ、いいけど。
「ていうか、
晴一なんか用事でもあるの?」
「ぇ、なんで?」
「目覚まし、
まだ4;30なのに鳴ったから」
四角い黒い目覚ましを指差すと、
ぁあ、と納得したんだか
してないんだかよく解らない
声を発す。
「-‐…ぁあっ!」
「うえ??」
「そうだ、やっべ。
忘れるとこだった……!」
-‐何を?
そこらへん、
ちょっと説明してほしー…
「ユウ、早く準備して!」
「…ぇ、準備?」
「顔洗って歯ァ磨いて!
洗面所の吊り戸棚に、
ホテルで貰った歯ブラシあるから」
「-‐なんでそんな急いでんの?」
ばたばたとクローゼットを開け
服を物色する晴一に、
あたしは問う。
「--見に行こう」
ニッ、と口元を吊り上げて、
晴一は笑う。
「…なに、を?」
この笑い方、嫌いじゃない。
そんな風に思いながら、
あたしは晴一の返答を待つ。
「--朝焼け」