オオカミ専務との秘めごと
最悪な誕生日
冬の朝。
ピピッピピッと、心地いい眠りから覚ます不快な音が耳に届き、薄目を開ける。
「んー・・・うるさい・・・もう分かった。起きるからー」
鳴り続けるアラームを止めるべく温かい布団の中から腕を伸ばす。
と、ひんやりとした空気に触れて今日の寒さを実感した。
正直もう少し眠っていたいところだけど、目覚まし時計のスイッチをオフにして、エイッと布団を退けて起き上がる。
時刻は午前二時半。
大半の人は温かい布団の中で夢を見ている頃だけど、これが、いつも私の起きる時間。
軽く顔を洗い紺色のジャンバーを着て、顔が隠れるくらいにマフラーをぐるぐるに巻く。
手袋をして防寒対策万端にしても、外に出ると冷たい夜風が身に染みた。
「うー、今日も寒いっ。けど、いい天気!」
この時間に起きて、唯一得したなと思えるのは、綺麗な星空が見られること。
明かりが多い時間帯とは比べ物にならないくらいによく見えるのだ。
ぶるぶる震えながら愛車の鍵を外して、いざ仕事に出発!
愛車といっても、高校入学と同時に買った十年もののママチャリだけど。
ひゅうっと風が吹いて気が萎えそうになるけれど、体が温まるまでの我慢!と自分を励まし、闇の中をバイト先である『塚原新聞店』までかっ飛ばす。
すると朝刊を載せたトラックが既に着ており、荷下ろしが全部済んでいた。
「うわ、今日は早い」
焦りつつ自転車を小屋の中に入れて、事務所に入りタイムカードを押した。
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