オオカミ専務との秘めごと
ヘリポートのことを言うわけにいかず、曖昧な笑顔を向けると、佐奈は「じゃあネットで探してみる」と言ってスマホをいじり始めた。
私が今まで使っていたマウスパッドは、会社から支給された無地のブルー。
大抵の女子社員は自分好みのものを持参して使っていて、佐奈なんて、マウスもピンク色の可愛いものに変えている。
私は黒いシンプルなマウスで、周辺機器なんて支障なく使えれば、色や模様なんてどうでもいいと思っていた。
けれど、昨夜大神さんに連れて行ってもらったヘリポートのお土産屋さんで、このパッドに一目惚れしてしまったのだ。
観覧車の花が咲く夜景のもの。
目にするたびに昨日のことが思い出されて胸が熱くなる。
昨日は、ナイトクルージングからヘリポートに戻ると、施設内にあるバーラウンジに案内された。
灯りを絞られた照明の下で、窓から見える黒い海と遠くに光る灯台の灯りを眺めながら、二人だけでゆっくりと過ごしたのだ。
大神さんはノンアルコールのカクテル、私はシャンパンをグラスに注いでもらい、乾杯をした。
最初に公園で缶ビールを飲んだときみたいに大神さんは無口で、私もあまりお話ができなくて、ただ一緒に海を眺めてグラスを傾けた。
そしてそのあとお土産屋さんに行ったとき、たくさんあるヘリポートのグッズの中で、一番に目に入ったのがこれだった。