オオカミ専務との秘めごと



郵便物や宅配物は受付で受け取られて、まとめて各部署に届けられるもの。

大抵の郵便物は、塩田さんほか受付の子が届けてくれるが、重い宅配物はこちらから台車を持って取りに行くことが多い。

いつもは今頃、私のところに「宅配着ました」と連絡があるんだけど。


「ね、佐奈。受付から宅配の連絡ないよね?」

「んー、菜緒のほしい宅配って、ハイルング便りだよね?まだ連絡受けてないよ。しおちゃんに訊いてみたら?忙しくて忘れてるだけかも」


佐奈が言うには、塩田さんは割合うっかりなところがあるらしい。

受付に内線をかけてみると、塩田さんとは別の子が出た。

宅配のことを尋ねると、昨日の午前中に到着しているという。

カウンター内を占領して邪魔だから早く取りに来てくださいと言うので、すぐさま席を立った。


営業部専用!のテプラが貼られた台車を持って受付まで急いで向かう。

エレベーターは、下行きボタンを押すとすぐにドアが開き、ラッキー!と思いつつ台車を転がして乗った。

閉ボタンを押そうとすると「ちょっと待った!」と、どこかのテレビ番組みたいに叫ぶ声がし、長谷部さんがエレベーター前に走り込んできた。


目が合ってしまい、反射的に閉ボタンを押す。

すると長谷部さんは、閉まりそうなドアを手でガッと押さえて乗ってきた。


「キミなあ、閉めるなよ」

「ご、ごめんなさい」


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