オオカミ専務との秘めごと
「実は・・・かなり、お待ちしていました」
「ふうん、まあ、いい。時間がなくなるから、行くぞ」
手を引かれて行くと、例の『トビウオハイヤー』の運転手が黒い乗用車の前に立っていた。
どうぞと、恭しく開けてくれたドアからレディファーストで乗り込み、大神さんが私の隣に座った。
「今日はどこに行くんですか?」
「オオガミホテルだ。パーティに参加するから、その前に身なりを整えるぞ」
「パーティ!?私がパートナーでもいいんですか?」
「無論だ」
なぜかムスッとしている大神さんにはそれ以上話しかけることができず、なんのパーティなのかは、会場に着いてのお楽しみとなった。
まあレンタルのお仕事はいつもこんな感じで、今更なことだ。
車はいかにも高級そうなお店の前に停まり、大神さんは気後れしている私を導くように手を引いていく。
ブランドに詳しくないのでよく分からないが、パッと見ただけで、一度も袖を通したことのないような高級品を扱っていることだけは、分かる。
多分、値段のタグを見ただけで気絶しそうになるに違いない。見ないでおこう。
「いらっしゃいませ。大神さま、お待ちしておりました」
「彼女に似合うものをよろしく頼む」
「はい、かしこまりましてございます。まあ、素敵なお嬢さまですこと」
にこにこと笑顔を振りまく店員さんたちが、こちらへどうぞと、私をお店の奥へ連れていく。