オオカミ専務との秘めごと
ドア一枚隔てた向こうは、パーティ用のドレスばかりが並ぶ部屋だった。
真ん中に応接セットがあり、後から入ってきた大神さんはそこに座った。
シングルベッド一台分よりも広い試着室の中に通され、ドレスが何着も運び込まれる。
それを試着してはカーテンを開けて大神さんに見せて、彼が首を縦に振るまで繰り返した。
最終的に、パープルで左胸にバラのコサージュの付いた膝丈のイブニングドレスに決まった。
次は美容室に連れていかれて髪のセットとメイクをしてもらう。
三人の若い美容師さんが私を見て、きゃあきゃあと騒ぐ。
「まあ、プルプルツヤツヤの肌で羨ましいわ」
「髪も艶々のサラサラでこのまま切らなくても大丈夫なくらい」
「さすが、大神さまがお連れするお方ですね」
慣れない褒め言葉の連続で、気恥ずかしくなる。
よろしくお願いしますと小声で言うと、お任せください!と元気な声が返ってきた。
ネイルケアまでしてもらい、鏡の中にはビフォーアフターで別人の私がいた。
「仕上がりました。大神さまいかがでしょうか?」
美容師さんたちに連れられて、珈琲を飲みながら待っていた大神さんの前に進み出ると、ふわりと微笑んだ。
「綺麗だ」
ヒールもバッグも新品で元々身に着けていた服類は全部紙袋の中。
最後に大神さんが私の首にアクセサリーを着けて、満足そうに言った。
「よし、完璧だ。行くぞ」