オオカミ専務との秘めごと

お皿にとって食べていると、二人の女性が大神さんに話しかけてきた。

私を見て「こちらのお方は?」と尋ねるので、彼が紹介してくれる。

二人とも大きな会社のお嬢さまで、大神さんとは幼い頃からの知り合いだという。

一人は屈託のない笑顔でお話してくれるけれど、もう一人は言葉の端々に「この人は大神さんの何なの?」的な気配がチラチラ見える。

彼女の視線が針のように刺さっていたたまれなくなり、お手洗いに行くのを口実に彼から離れた。

慣れない社交の場は、花売り娘にはキツイ。


お手洗いの鏡の中にいる私は、確かに綺麗でパーティの場にふさわしく見える。

けれど中身は花売り娘でイミテーションだ。

お姫さまにはなれない。


会場に戻ると、隅っこで小さな男の子が座り込んでいるのを見つけた。

金髪の外国人の子で、ブルーのおぼっちゃまスタイルをしており、お人形みたいに可愛い。

ご両親はどこにいるのか、近くを探してもそれらしい人は見当たらない。

なんだか放っておけず、隣に座ると顔上げた。

青い瞳が少し涙に濡れている。

先ずは英語で話しかけてみると、フランス語で返ってきた。

出来る言語でよかったと思いつつ、一生懸命話してくれたのをまとめると、「退屈だから早く帰りたいのに、ダメってママに怒られた」らしい。

だから、ここでふてくされているそうだ。


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