オオカミ専務との秘めごと
大人ばかりの世界で退屈なのは仕方がない。
けれど、小さな子でも楽しめることが、何かあればいい。
クイズ?それともゲーム?
どれもイマイチで、うーんと知恵を絞っているとテーブルの上の紙ナプキンが目に入り、ピンと閃いた。
相手が外国人なら、日本の伝統工芸の折り紙を見せてみよう!
バッグの中から手帳を出して真四角にちぎり、鶴を折って渡すと青い瞳をキラキラとさせた。
どうやって作るの?魔法みたい!と興奮気味に訊いてきたので、折り方を説明していると頭の上から声が降ってきた。
「おい、遅いから探したぞ」
「あ、大神さん、ごめんなさい」
「その子は?」
「フランス人の男の子です。退屈だと言うので、一緒に折り紙をしていたんです」
「折り紙・・・?」
これですと言って、折り鶴と奴さんを見せると、大神さんも一緒に座り込んだ。
「俺も折る。紙を貸してみろ」
三人で座り込んで、ああだこうだと言いながら折るのは楽しい。
やがて男の子のママが探しに来たので、折り紙の説明をすると笑顔でお礼が返ってきた。
叱り過ぎてしまったことをとても反省していると言う。
ママは大神さんにも話しかけるけれど、彼はフランス語は不得意分野のようで返事が曖昧になる。
なので、僭越ながら私が通訳をした。
男の子は折り鶴と奴さんを持ってバイバイと元気に手を振って、ママと手をつないで人並みの中に消えていく。