オオカミ専務との秘めごと
自分みがきのためにと、フランス語を勉強し直していてよかったと心底思う。
意外なところで役に立つものだ。
「ママさん、男の子のことをすごく心配していましたね」
親の愛を感じて、両親のことを思い出してしまい、ちょっぴり切なくなった。
私がデパートで迷子になったとき、あんな風に探してくれたっけ。
「そうだな。だが俺も、お前が心配だったぞ。だからもう離れるな」
私の手をぎゅっと握る大神さんの手はあたたかくて優しくて、また勘違いしそうになる。
彼には思う人がいるのに。
彼の天然の紳士ぶりは、花売り娘にとっては毒だ。
じわじわ浸食されていつか滅びてしまう。
それを彼は知らない。