オオカミ専務との秘めごと

「そっか、雄太は、こんなことを言うようになったんだね」


私にとっては、両親が死んだ瞬間から今までずっと幼いままで、守ってあげなくちゃいけない可愛い弟だったのに。


「ナマイキ」

『向こうで、外人のイイ男捕まえて来いよ!』

「さらにナマイキ」

『早く相手を見つけないと、俺に先を越されるぜ?』

「何それ、ナマイキ通り越して、すごくムカツクんだけど」


ムカツクと言いながらも、私の顔は笑っている。

弟との会話はやっぱり楽しい。

でもそうか、雄太には彼女ができたのかな。

バイトと勉強に明け暮れて遊ぶ暇もないと心配していたけれど、適度に楽しく過ごしているんだ。

現実的には、まだ乗り越えなくちゃいけない問題はあるけれど、私も弟離れをする時期なのかもしれない。

寂しく思えるけれど、彼は成長しているのだ。

私も負けずに成長しないと。


『ありがとう、雄太。私にとって一番いい結論を出すね』

『ん、じゃあ連絡待ってるな』


LINEを閉じてスマホを充電コードに差し、ピンクスマホを取り出してみる。

彼がドイツに行ってからも毎日チェックしているが、メールの着信はない。


彼の伝えたいこと。

海外赴任のこと。

レンタル雇用のこと。

弟のこと。


ベッドに入っても、それらすべてが頭の中で目まぐるしく動きまわる。

今夜もまた、眠れない予感がした。


< 177 / 189 >

この作品をシェア

pagetop