オオカミ専務との秘めごと
「そっか、雄太は、こんなことを言うようになったんだね」
私にとっては、両親が死んだ瞬間から今までずっと幼いままで、守ってあげなくちゃいけない可愛い弟だったのに。
「ナマイキ」
『向こうで、外人のイイ男捕まえて来いよ!』
「さらにナマイキ」
『早く相手を見つけないと、俺に先を越されるぜ?』
「何それ、ナマイキ通り越して、すごくムカツクんだけど」
ムカツクと言いながらも、私の顔は笑っている。
弟との会話はやっぱり楽しい。
でもそうか、雄太には彼女ができたのかな。
バイトと勉強に明け暮れて遊ぶ暇もないと心配していたけれど、適度に楽しく過ごしているんだ。
現実的には、まだ乗り越えなくちゃいけない問題はあるけれど、私も弟離れをする時期なのかもしれない。
寂しく思えるけれど、彼は成長しているのだ。
私も負けずに成長しないと。
『ありがとう、雄太。私にとって一番いい結論を出すね』
『ん、じゃあ連絡待ってるな』
LINEを閉じてスマホを充電コードに差し、ピンクスマホを取り出してみる。
彼がドイツに行ってからも毎日チェックしているが、メールの着信はない。
彼の伝えたいこと。
海外赴任のこと。
レンタル雇用のこと。
弟のこと。
ベッドに入っても、それらすべてが頭の中で目まぐるしく動きまわる。
今夜もまた、眠れない予感がした。