オオカミ専務との秘めごと

うららかな春の日が窓際の観葉植物に当たる暖かい午後。

フロアには外線が鳴り応対する声が途切れず、活気があるオオガミフーズの営業部は一見いつもと変わらないように見える。

でも楢崎さんをはじめとした主任以上の社員は、二課の課長たちと書類の有無を確認しあったりして、かなりバタバタしている。

それというのも、専務が帰国されたと一報があり、出社次第報告を兼ねた主任課長会議をしたいと連絡があったのだ。

今朝まとめ髪の秘書さんが営業部まで来て、きりっとした口調で課長に尋ねていた。


『皆さまのご都合はいかがですか。専務は急がれておりますので、都合を合わせていただけるとありがたいのですが』


専務に言われれば、余程の切迫事項がない限り都合をつけるもので、急きょ今日の三時から主任課長会議をすることになった。


──彼が、帰ってくる。


「佐奈、会議室の準備してくるね」

「あ!待って、菜緒。今日竹下さん休みでしょ?一人じゃ大変だから、私が代わりに当番するよ」

「うん、ありがとう。佐奈」


会議室の準備ですることは、椅子とテーブルの整頓をしてテーブルを拭き、カーテンを閉めて資料を投影するスクリーンを下げておくこと。

あとはすぐにお茶が出せるように給湯室でお湯とお茶の葉を確認して、湯呑を人数分準備しておく。

それで会議が始まったらすぐにお茶を出し、終わったら片付ける簡単な仕事だ。

佐奈と一緒に準備を終えて部に戻り、会議の時間まで業務をして過ごす。


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