オオカミ専務との秘めごと
警察官は、自転車に乗っていた雄太にバイクがぶつかり、命に別状はないけれど、足の骨を折っていてしばらく入院が必要だと言っていた。
足の骨だけなんだろうか。
他には?どのくらい入院する?
警察の話だけじゃ詳細は分からず、雄太の声を聞くまで気が気じゃない。
ATMでお金をおろし、震える手で新幹線の切符を買った。
出発時間まであと十分程ある。
平日のホームにはビジネスバッグを持ったサラリーマンが多く、たまに親子連れや女性グループがいる。
そのなかを、自由席の乗り場まで移動した。
時刻は業務終了のチャイムが鳴る頃だ。
大神さんはメールを見てくれただろうか。
「待て!神崎菜緒!」
「・・・へ?」
突然大きな声で名前を呼ばれ、振り向けば大神さんが走ってくるのが見えた。
「え、え、え?どうして、ここに?」
「あんなメールを見れば、今の俺はこうせざるを得ん」
辛そうな顔をして息を切らしている彼は、相当に走ってきたと思われる。
そういえば、メールば『約束はナシにしてください。しばらく会えません』と送っていて、詳しいことは何も書いてなかったっけ。
だから、大神さんはこんなに急いで走ってきたの?
どうしてここにいるってわかったの?
新幹線がホームに滑り込んできて、私は旅行鞄を持ち上げた。
とりあえず今はこれに乗って雄太のところに行かないといけない。
「あとで詳しいことをお話します」