オオカミ専務との秘めごと
その思い違いに笑ってしまうけれど、彼は照れながら、真面目に冷静さを欠いたと言った。
そんな彼が可愛いく、愛しいと思う。
私に赴任の話が来たことを話したら、驚きながらも「菜緒に打診が来るのは、おかしくない」と納得していた。
A病院は、割合駅に近いところにあった。
雄太は足の骨折と腕の打撲と、顔に少しけがをしていたけれど、意外に元気で一安心した。
バイクがあまりスピードを出していなかったことが幸いだったらしい。
私の海外赴任の話を聞いて、バイトを一つ増やした矢先の事故だったそうだ。
そんなことを聞くと、責任を感じてしまう。
赴任の話は断ると話したら、雄太は残念そうに肩を落とした。
大事な弟が怪我をしたのに、置いてはいけない。
「で、そちらの人は?」
私の後ろにいる大神さんを見て、雄太は首を傾げた。
「初めまして。大神です。菜緒さんとは、真面目にお付き合いさせていただいています」
彼がそう挨拶をすると、雄太は口をあんぐりと開けてびっくりした。
「弟の雄太です。こんなザマですみません。姉をよろしくお願いします」
「もちろん、幸せにします。雄太君も、これからは勉学ひとつに集中してください」
彼が言った言葉を理解できない雄太は「はい」と返事をしながらも、しきりに首を捻っていた。
雄太の身の回りのものを準備するために、大神さんと病院を出る。
ここに来る前に見つけておいたホームセンターまで歩くことにした。
手をつないで歩く距離感がすごく心地いい。
「いい子だな。さすが、菜緒の弟だ」
「はい、自慢の弟ですから」
「今度、ご両親の墓参りに連れて行ってくれないか。挨拶をしたい」
「はい、是非。両親に会ってください。きっと喜びます!」