オオカミ専務との秘めごと

一面の青色の中、私は薄い布一枚を身にまとい、白い雲の上に乗っている。

この雲は小さいけれど柔らかくてあたたかく、ふんわりした手触りはとても気持ちがいい。

とっても居心地がよくてずっと雲の上にいたいけれど、私はここから出なくちゃいけない。

見回すと、後ろの空間に白いドアがあった。

でもそのドアは自分では開けられないと知っている。

だってあれは、あそこから来る誰かが開けるものだから。

その人は私の王子さまで、この青い世界から出してくれる人。

きっと、もうすぐ来る。

そう予感してドアをじっと見つめていると、取っ手が動いて少しずつ開き始めた。

徐々に光が射し込んできて、現れたその人は黒い髪で背が高く天使の羽を持っていた。

とても神々しいけれど、何故か缶ビールを持っている。


『飲むか?』


あ、あなたは・・・っ。


「ヤクザ男!?」


呟いた自分の声に驚いて、ハッと目覚める。

なんて夢をみるんだろうか。王子さまがあの人だとは夢見が悪すぎる。


いつものように目覚まし時計で時間を見ようとして、ふと周りの異変に気が付いた。

視界に収まりきらない白い天井に、見覚えのない模様の青い掛布団。

そして極めつけは、隣に、人の気配を感じること。

規則的な寝息も聞こえてきて、昨夜の出来事が脳裏を駆け巡った。

まさかここは・・・。

寝息の主が男性で、さらに誰なのか見当がつくが、確かめるのが超怖い。


< 23 / 189 >

この作品をシェア

pagetop