オオカミ専務との秘めごと
「抱いちゃいないから、安心しろ」
「そう、なんだ・・・」
なんだ、そうなのか。それなら最初からそう言ってくれればいいのに、この人、すごく意地悪だ。
でも、ホッと胸をなでおろしつつも、心の片隅では残念に思ってしまっている。
こんな複雑な気持ちになるのは、きっと年齢のせいだ。
ヤクザ男は「ちょっと待ってろ」と言ってベッドから下りて、壁の一部分をパカッと開けた。
何もない壁だと思っていた部分は一面収納になっているようで、道理で何も物がないはずだと納得する。
彼は、がさごそと探って取り出した黒い塊をベッドの上にポンと置いた。
「あんたの服はリビングのソファにあるから。シャワー浴びたいなら、バスルームはキッチンの横。わからなかったら聞けよ」
そう手短に言って、部屋から出て行った。
渡してくれたのはスウェットの上下。バスルームに行くまでの短時間のことなのに、貸してくれたのだ。
着てみるとぶかぶかで袖も足も長い。
上だけでもミニワンピくらいの長さがあるので、ズボンは穿くのをあきらめてベッドの上にたたんでおいた。
寝室も広ければバスルームも広い。
黒いつるつるの壁は、自分の裸体がほのかに映るくらいにぴかぴかだ。
最新機能の給湯システムに散々苦労しながらもなんとかシャワーを済ませ、服に着替えた。