オオカミ専務との秘めごと

「こちらのお席にどうぞ。お決まりになりましたら、お呼びください」


深緑のエプロンを付けた店員さんがメニューと水を置き、にっこり笑って去っていった。

所々に観葉植物が置いてあるログハウス風の店内は、特別森っぽいわけではない。

でもBGMに水音と鳥の鳴き声が使われていて、耳から癒される感じだ。

こういう雰囲気は、嫌いではない。

テーブルの上に立てかけてあるポストカードには、森の風景の真ん中に『都会の真ん中で高原の中の雰囲気をあなたに』の言葉が書かれている。

メインメニューはパンケーキとクレープのラインナップで、どれもフルーツがふんだんに使ってある。

朝から何も食べていないので、お腹が空きすぎてどれもおいしそうに見えて迷ってしまう。


「へえ、キイチゴ、ブルーベリー、コケモモのケーキは高原っぽいな」


彼が言うので隅の方に書かれてあるケーキのところを見ると、高原より直送のフルーツを使用!の文字が躍っていた。

その隣にあるアイスの欄には、牧場直送のミルクを使用!の文字もある。

真剣な感じでメニューを見る彼は、仕事のことを考えていそうだ。

もしかしたら、こういうお店のアドバイスをするコンサルタントをしてるのかもしれない。

< 29 / 189 >

この作品をシェア

pagetop