オオカミ専務との秘めごと
振り向くと彼はダッシュボードから紙とペンを取り出して何やら書き込み始めた。
「これ、俺のだから。家に着いたら電話しろ」
「え・・・」
戸惑う私の手に紙を握らせ、必ずしろよと睨むように見る。
その目が、すごく怖い。
「は、はい」
「よし。じゃあな。気を付けて帰れよ」
走り去っていく車を呆然と見送り、手の中にある紙を開いてみた。
名前と九ケタの番号が書いてある。
走り書きのような文字だけど、意外に綺麗だ。
「あれちょっと待って?・・・この名前って、まさか」
その名前を何度も見かえして愕然とし、紙をバッグの中に押し込んだ。
できれば見なかったことにしたい。
だってそこに書かれていた名前は『大神孝太郎』。
(株)オオガミフーズの専務の名前と一緒だったのだ・・・。