オオカミ専務との秘めごと


それから佐奈は、男性幹事に対して怒りを露にする。

メラメラと燃える気が細い体を包んでいるように見えてちょっと怖い。

佐奈は不誠実な人が、超がつくほど大嫌いなのだ。


「んもうっ、フリー限定だよって何度も確認しあったのに!」


パソコンを立ち上げて仕事の準備をしながら、あの人とはもう二度と組まない!ってぷりぷり怒っている。

男性幹事は友人の彼の知り合いで、佐奈自身はあまり知らない人だと言う。


「有名な企業名に惹かれて失敗したわ。浮気目的で来るなんて許せない」

「でも、他の人は誠実だったんじゃないかな。佐奈は梅沢さんと仲良かったじゃない。どうだったの?」

「んー、イマイチかな。やっぱりスキルも性格もいい男って、なかなかいないね」


そう諦めがちに言う彼女は、五ヶ月ほど前、大学時代からの付き合いだった彼と別れている。

原因は仕事の忙しさからくるすれ違いと、彼の浮気。

今は合コンに熱心で吹っ切れたように見えるけど、たまに、まだ元カレのことが好きなんじゃないかな?と思うときがある。

別れたばかりの頃はかなり憔悴して痩せてしまって、見ていて心配なくらいだったから。

それほど好きだった人を、月日が経ったとはいえ、簡単に忘れられないと思うのだ。



始業のチャイムが鳴り、頭を仕事モードに切り替える。

今日は楢崎さん依頼のアンケートの集計を進めなくちゃいけないのだ。

しっかり気を引き締めないと。


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