オオカミ専務との秘めごと
「ね、頼むよ、神崎さん。英語はできる子が多いけどフランス語はいないんだ。楢崎主任には俺の仕事を手伝うこと、了解を取っておくからさ。今日中に出来る?」
長谷部さんは、顔の前で手刀を切ってお願いしてくる。
すごく困っている感じがヒシヒシと伝わってきて返答に困っていると、隣からパシッとデスクを叩くような音がした。
ギョッとして振り向くと、立ち上がった佐奈が長谷部さんを睨みつけている。
今朝と同じような怒りの気が体を包み、それが心なしかパワーアップしているよう。
「あの・・・佐奈?」
「なんだよ、三倉」
「なんだもなにも。長谷部さん、そんなの自分ですればいいじゃないですか。フランス語ペラペラ話せるんだし、分からない言葉は翻訳ソフトにかけるだけでしょう。菜緒は集計で忙しいんですから!」
「翻訳ソフトじゃ、理解不能な文になるし、かえって時間がかかるんだよ」
「そこをなんとかするのが、デキる男じゃないですか!それくらい、やってみせてくださいよ」
「へえ、デキる男、ね・・・やってみせたら、三倉、今夜俺と付き合ってくれるか?」
「あなたは何を言ってるんですか!仕事に私情を絡めないでくださいっ」
「三倉がYESと言えば、モチベーションが上がるんだよ」
「何それ、最低」
当事者である私をよそに頭上で繰り広げられるバトル。