オオカミ専務との秘めごと
男性はスーツを着ており背が高く、鼻筋が通っていて目は二重、割りとイケメンでモテそう。
歳は私よりも少し上のアラサーっぽい。
喧嘩の原因は、浮気したのがばれたとか、かな?
まじまじと男性の顔を見ていると、ずいっと顔を近づけてきたので少しのけぞった。
「ふん、スナフキンみたいだと思っていたが、まあまあだな」
「は?スナフキン?」
言ってる意味が分からなくて首を傾げると、急に後頭部を押さえられて顎を上げられ、顔が近づいたと思った瞬間、唇に温かいものが重なった。
頭の中でびっくりマークとハテナマークが踊り狂う。
離れようと試みるが、唇を割って侵入してきた舌が理解しがたい動きを始め、今度は頭が真っ白になる。
「んー・・・んー!」
一生懸命男性の体を押して抵抗を続けていると、後頭部から手が離れた。
離れていく男性の唇が艶っぽく濡れている。
「何をするんですか!?」
唇を拭いながら睨むと、男性はにやっと笑った。
「口止めだよ。今の件、新聞店には黙ってろよ。あんたの顔も、よーく覚えたからな」
「へ?それって、脅し・・・?」
「そういうこと。じゃあな、新聞屋のスナフキン」
男性は不敵な笑みを残し、車に乗って去っていった。
普通の人っぽく見えたけど、まさか、ヤクザの人?
「でも、今の・・・私の、ファーストキス・・・」
真っ白だった頭の中に、残念過ぎる初体験と脅された恐怖が同時に浮かび、なんだか無性に腹が立ってきた。