オオカミ専務との秘めごと
でも、もしも計られたにしても彼女に罪はなく、全部が自分のまいた種のせい。
「は・・・い・・・そう、ですね。これ・・・ありがとうございました」
やっとの思いで声を絞り出して引きつる顔に笑いをのせ、営業部へ戻るべくエレベーターに乗った。
頭の中は真っ白で、どう歩いて戻ったのか分からない。
気づけば佐奈に郵便物の束を渡していた。
「ありがとう。助かったー。あ、菜緒。専務に会えた?」
にこーっと笑う彼女の顔に、“私が計りました”と書いてある。
「う・・・うん。ばっちり、会いました」
そう、彼女には罪がない。
勘違いな恋の応援をしてくれただけだから、責めてはいけない。
でも、なんて余計なことをー!!
叫び声をあげてデスクに突っ伏したくなるのを、なんとか耐える。
ああ、なんだか具合が悪くなってきた・・・。
出来るなら、佐奈に専務のことを訊いたあの時間に戻ってやり直したい。
「今度は、話すきっかけができるといいね」
佐奈は郵便物を開けながら恐ろしいことを言うから、ガバッと顔を上げて向き直った。
この上話すきっかけなど作られたら、私の人生ジ・エンド!
会社をクビになって確実に路頭に迷うことになる。
私だけならまだしも、雄太まで影響してしまう。
「そんなことより、仕事しよう!きっかけは自分で考えるからいいよ!佐奈はもういいから、ありがと!仕事溜まってるんでしょ」