オオカミ専務との秘めごと
『午後二時。迎えに行く』
「迎えにって、今日!?」
早速のお仕事依頼に動揺しながらも、問い合わせメールを作成して送る。
すると、すぐに返信があった。
『無論今日だ。付き合ってほしい場所がある。服装は普段の格好でいい』
付き合ってほしいとは、また評判のいいお店だろうか。
二時なら、おやつタイムだからスイーツのお店かな。
甘いものが苦手だって言っていたっけ。
そう予想をつけて約束の時間までを過ごし、二時少し前に外に出た。
アパートの駐車場に見覚えのある黒い車があり、大神さんが車に凭れるように立っている。
予想外にもスーツを着ていて焦ってしまう。
どうやら改まった場所に行くみたいだ。
私はスカートではあるが、上は紺のアンサンブルニット。
「あの、私はこの服でいいんですか?」
大神さんは私をパッと見て「十分だ」と言い、助手席のドアを開けて促すので、乗り込んだ。
運転席に座った大神さんが、シートベルトをしながら言う。
「新聞屋は辞められたか?」
「はい。昨日付で」
「そうか。それならいい。頑張ったな」
ふわっと微笑んで、頭を撫でてくるから胸がとくんと鳴ってしまう。
不意打ちの優しい笑顔は、超困る。
「あ、あの、スマホ、ありがとうございました。でもどうしてわざわざ?」
「万が一何かがあった場合、そのスマホを処分するだけで証拠がなくなる。そのためだ」
「なるほど、そうですね」
そっか。レンタルとはいえ、大神さんのそばに私みたいな貧乏人がいるのがわかったら、何か不都合なことがあるんだ。
理由は単純だったんだ。
車は一時間ほど走り、地下駐車場に入った。