オオカミ専務との秘めごと
それにこれ以上私が黙っていると、二人は延々と言い合いをしそうな気がする。
「あの、私引き受けますから。どうか二人とも穏便に・・・」
「菜緒、ダメでしょ!?」
「あらー、神崎さん、いいの?じゃあお願いねー!」
ひらひらと手を振って去っていきそうな竹下さんを、佐奈が呼び止めた。
「こんなの今回限りにしてください!楢崎主任を通すべきことです」
「三倉さん、あなた、長谷部さんに気に入られてるからって、調子に乗らない方がいいわよ」
鬼のような形相で佐奈を一睨みして、竹下さんは自席に戻っていく。
その背中に佐奈は言葉を投げつけた。
「あんなの、ぜーんぜん、関係ありませんからっ!!」
どうやら、竹下さんは長谷部さんのことが好きみたい?
そんな噂を一度も耳にしたことがなく、ちょっと意外に思えた。
「もう、菜緒ったら。引き受けることないのに!ちょっと楢崎主任や男性社員が会議でいないからって、したい放題するなんて、ほんと、頭にくる!」
「ごめん、佐奈。つい引き受けちゃって・・・次回は断るから」
ぷりぷり怒る佐奈を懸命になだめて仕事に戻るように仕向け、渡された書類の量を再確認してうんざりとした。
半年前の日付の書類もあって、相当放置していたと思える。
マメにやれば、こんなに溜まらないのに・・・。
思ったよりも時間がかかりそうだと覚悟を決め、私もメール作成の続きをした。