オオカミ専務との秘めごと

「余計なことを言ってないで、さっさと仕事の続きしなさいよ。あ、もしかして、もうやることないのー?それなら、この納品書を総務に持って行ってほしいわー」


総務に渡す分を私の手に乗せ、竹下さんは用が済んだとばかりにバタバタと仕事を始めた。

もうこれ以上彼女と話すのは諦めて自席に戻る。

すると佐奈は待ち構えていたようで、すぐに「どうだった?」と訊いてきた。

かいつまんで話すと、はああぁっと深いため息を吐いてがっくりと肩を落とした。

さすがの佐奈も、怒るよりも呆れたらしい。


「それ、楢崎主任に報告した方がいいね。多分知らないと思うから」

「うん、機会を見て話してみる」


佐奈に総務部に行くことを伝えて、納品書の束を持ってエレベーターに乗る。

先週までは“専務警報”が発令していたここは、すっかり解除されて平和そのもの。

びくびくして、スパイのようにコソコソ移動していたことが遠い過去のことに思える。

常に携帯するよう言われたピンクスマホは、今日はジャケットの内ポケットに入れてある。

多分業務時間中に仕事依頼が来ることはないだろうけど、一応たまにチェックしているのだ。

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