オオカミ専務との秘めごと
二階にある総務部のカウンターで納品書を渡す相手を尋ねると、お団子ヘアの子がぱたぱたと駆け寄ってきた。
「すみません。営業部一課の納品書です」
「あー、これ。やっぱり営業部だったんですね。きっちり持ってきてもらわないと、明細が合わなくて困るんですよ」
毎月これで残業になるから気を付けてください!と叱られてしまい、「すみません。ごめんなさい」と平謝りをした。
どうして私が叱られなければならないのか。
ちょっとへこみながら営業部に戻り、デスクの上にあるファイルを抱えた。
今度は書庫に行ってくると佐奈に伝えると、微妙な笑顔を見せてくれた。
佐奈の気持ちは痛いほどに伝わってくるし、私も、こんなのはもう二度と御免だ。
書庫は、廊下の一番奥にある。
書庫はドアの近くに調べもの用のデスクが一つあり、その傍にカートが一個置かれている。
その上にファイルを置いて、一課の棚まで移動した。
表示された場所通りにファイルを仕舞っていると、奥の方から小さな声が聞こえてきた。
「・・・お願い」
ささやくような女性の声に、「仕方ねえな」と言う男性の低い声が重なる。
女性の声は切実な感じで、何か問題があって困っているようだ。
ここは営業部の書庫。
何か手伝えることがあればと声のする方に行き、そこで目に入った光景に驚いて、その場に立ち尽くしてしまった。