オオカミ専務との秘めごと
『地下駐車場で待ってろ』
地下駐車場・・・?というのは、先週彼に捕まった時に連れていかれた場所のことだろうか。
あのときは状況を打開する策を考えるのに必死だったからよく覚えていないが、多分あそこは会社の地下にある駐車場で、重役クラスの自家用車と会社の営業車が停められているところだ。
会社は駅に近いから、当然のように一般社員はみんな公共交通機関で通勤している。
会社全体から言えばごく一部の人しか行かないし、存在を知らない人もいるかもしれない。
エレベーターのB1ボタンを押せば、簡単に行けるんだろうけれど・・・。
一緒にエレベーターを待つ面々は、男性もいるし女性もいて、毎度おなじみの顔ぶれだ。
同じく定時帰りなみんなの前でB1ボタンを押すのは、はばかられる。
あれ?この人は地下に何の用があるの?などと注目を浴びてしまいそうだ。
大神さんとの関係は秘密だから、ちょっとしたことでも疑問に思われる行動は避けたい。
それに、そうだ。IDカードを機械に通さないといけないではないか。
重役みたいに、地下駐車場とオフィスを直に往復できるわけではないんだから。
結局一旦外に出ないと、どうにもならない・・・か。
あのドアは、ビルのどちら側にあったっけ?
あの日のことを思い出しながら歩いていると、ドアは、駅方面とは反対側の壁にあった。