オオカミ専務との秘めごと

「では、この先は係りの者がご案内いたします。どうぞ、お楽しみくださいませ」


女性がにっこりほほ笑んでお辞儀をすると、背後から「ご案内します」と男性に声をかけられた。

今から何が始まるのかさっぱりわからず、大神さんを見上げるとふわっと笑う。


「心配するな、きっと気に入る」


男性の後について小さな部屋に入ると、風の強さへの注意と搭乗後はシートベルトを着用などの諸注意の説明が始まった。

搭乗って、これってまさか・・・?


「では、どうぞ」


恭しくドアが開けられると、すぐにローター音が耳に飛び込んできた。

視線の先には、円で囲まれたHマークとライトの光を浴びる青い大きな乗り物が・・・。


「・・・ヘリコプター!?」

「あなた様を驚かせたいと、大神様からご依頼がありまして、ヘリの存在を最後まで隠させていただきました。成功ですね」


そう言って係りの男性はにこにこと笑った。

目を丸くしている私に、大神さんは「驚いたか?」と訊いて意地悪く笑う。


「・・・はい、とてもびっくりで、どきどきしてます。本当に、今からあれに乗るんですか?」

「無論そうだ。さあ行くぞ。風が強いから気を付けろ」


外に一歩出て、堪らず「うわっ」と声が出る。

回るプロペラから生まれる風が半端ない。

大神さんの腕につかまり、もう一個の手でスカートを抑えながら懸命についていく。

ヘリコプターは観光バスのような乗り口で階段が高く、それなのに手すりがなくて怖い。


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