幸せの青い鳥
そう、確か――雅樹先輩だ。



一生懸命にボクの傷の手当をしてくれてる彼を見ていたら



るりちゃんがいつも言ってた名前を思い出したよ。



でも、もっと知りたい。


るりちゃんが泣くほど悩んでいる、片思いの雅樹先輩のことを。



残してきた比呂とるりちゃんのことが気になるけど。



ケガが治るまでしばらくここでお世話になろうかな。



その日から、ボクはいつも雅樹先輩と一緒に過ごした。


彼はたいてい昼ごろに学校から帰ってくる。


大学生だから制服は着てないけど、きっとるりちゃんと同じようなところで勉強してるんだ。
ボクはそう思った。



「ピー助、いい子にしてたかぁ?」



雅樹先輩は、ボクをまるで弟か息子のように扱う。


そしてたくさん話を聞かせてくれたり、遊んでくれるんだ。



そういうところ、るりちゃんにすごく似てるんだよね。



「ほら、すごいだろ。メダルが3個だぜ」



ボクは今、カゴの中の鳥だ。



るりちゃんの家にいた時のマイホームより少しだけ小さいけど、住み心地はいいよ。



雅樹先輩が、ボクのために用意してくれたマイホーム。



その中で、ボクは雅樹先輩が自慢するメダルとかいうものを見ていた。



「ピー助にも見せたかったな。俺の跳ぶ姿」



雅樹先輩も、空を飛べるの…?


ボクは驚いて目を丸くした。(もともと丸いけど)


「あはは…お前にはわからないかもな、ハイジャンのことなんか」




でも、ボクはその時思い出していた。るりちゃんが教えてくれたことを。


雅樹先輩は大学部で陸上をやっていて、たくさん走ったり飛んだりしてるんだ。


そう、ハイジャン――。


夏休みにはいつもグラウンドで一生懸命に練習してるって、るりちゃんは話してくれた。

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