幸せの青い鳥
「お前はいいなぁ。自由に空を飛べて」



雅樹先輩が、戸口に出ていったボクのほっぺを指で撫でながら言った。


ボクはボクで。



雅樹先輩は言葉が使えるんだから


誰とでも自由に話せるじゃないか、と思ってたりする。



そりゃあ、みんな自分にないものを欲しがるのは当然だけど



雅樹先輩は人間のくせに飛んでるじゃない。



それって、贅沢だよ。



「鳥っていいよなぁ。もし鳥になれたら、毎日でもあのコに会いに行くのに」



え?あのコって…誰なんだろう。



雅樹先輩にも、好きなコがいるの?



気になって、ボクは鳴いた。雅樹先輩の顔を見る。



「なんだ、どうかしたのか?」



でも…ボクの言いたいことなんて、やっぱりわかるはずないよね。



「あ…お前、あのコのこと知りたいの?まさかな。だいいちいってみたって…」




 ――――――。 


ボクは鳴き続けた。さっきよりもずっと強く、




『好きなコってだれ?』



…って。訴えるように雅樹先輩を見つめた。




ボクの言いたいことがわかったのか。



それとも、念力のせいか。



雅樹先輩は教えてくれた。



それは、ボクが思いもしない人だったんだ。




雅樹先輩の好きなコは、るりちゃんだった。



ボクがここに来るまで一緒だった、ボクの飼い主だよ。



二人は学年が違うけど、

陸上部の練習をいつも見に来てたるりちゃんを



ずっと前から



好きだったんだって!


つまり…。




二人は、両想いなんだ。


でも、お互いに好きなのにそのことを二人とも知らないなんて



―――哀しすぎるよ。



やっぱりここで、ボクがなんとかしてあげなくちゃね。



だってボク、最初からそのつもりで家を出てきたんだもの。




その日の夜。



空には星がたくさん輝いていた。



こういう日には雅樹先輩、カーテンを開けたまま眠るんだ。



< 9 / 14 >

この作品をシェア

pagetop