隣の部屋と格差社会。


「こちらは現品限りになってます。」


突然背後から聞こえた声に振り返ると、店主のおじさんが立っていた。


「スチーム機能も付いてるので、旦那さんのワイシャツも一発でピシッと仕上がりますよ。」

「え…?」


にこにこと朗らかな笑顔でとんでもないことを言った店主。


もしかして、私たちのことを夫婦だと思ってる?

もしかしなくても、私が佐渡さんの奥さんで、佐渡さんが私の旦那さんだと思ってる?


体温が急激に上昇して、顔も耳も熱い。


そういう風に見えたんだ…。

その事実がむず痒くて、嬉しくて。


でも、何と返せばいいか分からずに佐渡さんを見上げると、佐渡さんは苦笑い。


その表情に、私との温度差を感じて胸がチクリと痛んだ。



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