隣の部屋と格差社会。
お嬢様、お見合いをする。



「なんで、こんなところに…?」



高かったはずの体温が、一気に下がっていくのを感じた。


お父さんよりも少し年上、確かあと数年で定年を迎えるはずの武田さんは、今日もピシリと背筋を伸ばしてまっすぐ立っている。


武田さんがこのマンションに来た理由。

そんなの、答えはひとつに決まってる。


「社長からのご命令で参りました。」


想像通りだったはずの武田さんの言葉に、心臓がどくんと嫌な高鳴り方をした。


社長、それは当然私の父のこと。


あんな風に家を飛び出したんだ。

こうやって、いつかは居場所がバレて武田さんが訪ねてくる。

そんなこと、覚悟なんてとっくにしていたはずなのに。


ここでの暮らしが快適で、楽しくて。


武田さんの顔を見たことで一気に現実に引き戻されていく。


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