隣の部屋と格差社会。
お互い無言のままエレベーターに乗り、無言のまま部屋の前まで着いてしまった。
私の頭の中はぐちゃぐちゃで。
でも、言わないといけないことがある。それだけは、はっきりと分かっていた。
「あ、あの!佐渡さん!」
「ん?」
「ありがとうございました。」
「いや、俺は何もしてないから。」
そう言うと、少し苦い顔をして持ってくれていたアイロンとアイロン台を玄関まで運んでくれる。
「悪い、力になれなくて。」
申し訳なさそうに言う佐渡さんに、慌てて首を大きく振る。
「そんなことないです!」
現に、隣で支えてくれていた。それだけで、私に力をくれた。
「いや、明らかに助けられる距離に居たのに、結局何も出来なかった。」
そんな…。佐渡さんが責任を感じることないのに。
そんな佐渡さんの優しすぎる言葉に、態度につい調子に乗ってしまう。