隣の部屋と格差社会。



「思ったことをすぐ口に出したらだめですよ。」

「はい…。ごめんなさい。」


まるで園児に怒るように晴日先生に言われ、いたたまれなくなって目の前で焼けすぎたカルビをつまむ。


うん、美味しい。ちょっと焦げてて苦いけど。


「その菖蒲先生を振った人って、どんな人ですか?」


振った人って…。まあ、その通りなんだけど。


好きな人、とか他にいい表現がなかったかね、晴日先生。


「マンションのお隣さん。」

「いつ出会ったんですか?」

「引っ越してきたときだから、4月かな。」


あ、正確には区役所で会ったときが最初か。


「右も左も分からない私に親切にしてくれて、それで…。」


あんなにはっきり振られたはずなのに、佐渡さんの話をするだけで体温が上がっていく私は相当往生際が悪い。


「私なんてお隣さんがどんな人かも知らないですよ。」

「え、そうなの?」

「普通そんなもんですって。」


そう言ってビールを煽る晴日先生。

ビールを美味しそうに飲むなんて、大人だな。


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