隣の部屋と格差社会。
もしかして佐渡さんって、いっつもバルコニーに居るんじゃないの?
いつものように煙草をふかしていた佐渡さんは、私の顔を見ると少し気まずそうな顔をした気がして、胸がちくりと痛む。
「悪い。」
そう言って部屋に戻ろうとする佐渡さんに、更に胸が痛くなる。
もう前みたいに、隣に居ることさえできないのかな。
そう思うと、勝手に口が動いていた。
「忘れてください。」
決して大きくはない声なのに、よく通った。
「この前私が言ったこと、全部なかったことにしてください。忘れてください。」
「いやでも、」
「お願いします。今まで通り、ただの隣人として居させてください。」
勝手に告白して、関係を変えようとした私にこんなこと言えるはずないのに。
自分がとんでもないわがままを言っていることに気づいていたけど、もう止めることはできない。